保険金の請求期限
死亡してから何年かたって生命保険に加入していたことがわかる場合があります。しかし、保険金の請求はいつまでもできるものではありません。消滅時効という制度があります。
消滅時効とは
保険金請求権の消滅時効期間は3年と定められているのが一般です。一定期間権利を行使しないとその権利を消滅させるという消滅時効という制度があり、その一定期間を消滅時効期間と呼びます。
一般の債権は10年間請求しないと権利が消滅しますが、飲食店の代金のように1年という短期間で消滅するものもあります。保険法第95条によると保険金や給付金、解約返戻金、前払保険料を返還する権利は、権利発生時の翌日から3年間行わなかった場合、時効により消滅します。
保険金請求権に時効がある理由
生命保険会社は保険金の請求があると、支払事由に該当するか保険事故の調査を行います。この調査は、保険事故発生から時間が経つほど、適正・迅速な判断をすることが困難になってきます。保険金請求権の時効は、このような理由などから設定され、生命保険の契約者の公平性が保たれます。
消滅時効を中断する「請求」
保険金請求権は3年で消滅時効になることはこれまで述べたとおりですが、時効期間の進行をストップして、時効がそこで中断する制度を時効の中断といいます。「請求」とは相手方に支払いを求めることで、民法で時効の中断が生ずる場合として定められています。
「催告」による場合は催告後6ヶ月のうちに、裁判上の請求や支払命令を申し立てなければ、中断の効力がなくなります。このことはぜひ覚えておいてください。
「請求」のいくつかの例
・訴訟の提起(裁判上の請求)
・支払命令
・催告(裁判外の請求)➝ 内容証明郵便(中断の効力は6か月のみ)
保険金請求権の消滅時効期間は3年だが実際のところは・・・
自動的に「3年経過したから権利が消滅する」わけではありません。
時効に伴う法律効果は時間の経過だけで生じるものではなく、時効によって利益を受けるもの(生命保険の場合は保険金の支払い義務が消滅する生命保険会社)が時効の利益を受ける旨の意思表示をすること(これを時効の援用という)によって初めて発生するものなのです。
これを生命保険に当てはめると、時効によって保険金の支払いを免れて利益を得るのが生命保険会社、保険金を受け取る事ができず利益を失うのが契約者(保険金受取人)になります。生命保険会社が契約者(保険金受取人)に意思表示すれば、時効が成立します。
しかし、生命保険会社は基本的スタンスとして、死亡や満期時の保険金の請求に関しては、時効の援用はありません(ただし、自殺や保険金詐欺の疑いがある場合等、事件性が高い場合には時効の援用をする場合があります)。保険金請求の時効が過ぎていても、保険金を受け取れる場合があります。
例えば、被保険者が失踪していて死亡したことを知らなかったケースや、自殺による死亡なので保険金が出ないと勘違いしていたケースなどがあるので、亡くなった親名義の生命保険で、「保険金の請求をし忘れている」もの、「契約があったことも知らずに、荷物を整理してみたら保険証券が出てきた」場合は、3年を過ぎてしまったとしてもあきらめずに、まずは生命保険会社に問い合わせてみましょう。
(参考)短期消滅時効について
消滅時効の期間を短期間と定めているものを短期消滅時効の制度といいます。法律で規定されている主な短期消滅時効の例は以下の通りです。
半年 | 小切手債権 |
1年 | 引っ越し費用などの運送費、旅館・飲食店の飲食・宿泊費用 |
2年 | 弁護士費用、卸・小売商人が売却した商品の代金、労働者の賃金 |
3年 | 医師の診療、手術費用、請負人の工事代金 |