トンチン年金の活用|長寿に備えて終身年金を手厚くし不安を軽減する!
女性の2人に1人、男性の4人に1人が90歳まで生きる時代になりました。
長生きは喜ばしいことですが、長い老後生活の大きな心配は生活するのに必要なお金です。
税金や社会保険料の負担は増える一方です。運用で資金を増やすことも考えられますが、失敗すると老後の生活設計がままならない可能性があります。
そこで、リタイア前に資産を築くとともに、安定してかつ長くフロー収入を得る準備を考えましょう。
「終身年金」を手厚くする
「終身年金」を手厚く確保するのが長生きに備えるカギとなります。
1.国民年金
ベースとなるのが、国民年金です。国民年金を満額受け取るためには40年間加入し、保険料を納める必要があります。
保険料を払っていない期間がないか確認しましょう。
現在の国民年金は学生を含む20歳から60歳までが強制加入ですが、今の50代の方は、学生は任意加入でした。
このため、加入せずに保険料を払っていない期間があるかもしれません。
保険料を払っていない期間が2年間の場合、40年間年金保険料を納めた人と比べて、年間で約3万9,000円年金額が少なくなります。
90歳(25年間)まで年金を受け取るとすれば、受取総額は97万5,000円も少なくなります。
当時未加入で払っていなかった保険料は、60歳以降の「任意加入」でその分を埋めることができます。
参考までに2年分の保険料は1万6,490円× 24ヶ月(2年)=39万5,760円(2017年度国民年金保険料で試算)を納めれば、年金の受給開始時に満額を受け取れます。
60歳以降に国民年金の任意加入ができる期間は65歳までとなりますが、昭和40年4月1日以前生まれの人は65歳以上の任意加入が可能となります。
保険料の増額についてはいつでも辞められますが、満額で打ち止めとなります。
公的年金は生きている間、支払われて長生きするほど任意加入の効果は高くなります。
なお、60歳で定年退職後、再雇用などで引き続き厚生年金に加入すれば、任意加入する必要はありません。
ただし、退職や起業などで厚生年金に加入しない人は、任意加入で国民年金を満額受け取れるようにしましょう。
2.トンチン年金
民間生命保険会社では個人年金保険が長生きに備える商品となりますが、個人年金保険の「終身年金」を扱う保険会社は少なく、また扱っていても保険料は高額です。
そこで注目したいのが、加入者は50歳以上限定になりますが、「トンチン年金」があります。
「トンチン」とは17世紀にイタリアのロレンツォ・トンティ氏が考え出したとされる「トンチン年金」に由来します。
簡単に説明すると、年金保険の加入者が亡くなったとき、その遺族に対しては払い込み保険料の7割相当の死亡給付金しか支払われず、死亡給付金に回らない3割部分や運用益などを生きている他の加入者の年金原資に回すというしくみです。
このため加入者は長生きするほど、多くの年金を受け取れるようになります。
逆に年金を受け取る前に亡くなれば、保険料の一部は掛け捨てになります。
トンチン年金は、生きている限り毎年決まった年金が受け取れるという安心を得るための個人年金保険です。
(1)トンチン年金のメリット
加入年齢が50歳以降で告知や医師の診査なしで申し込むことができます。
50代から老後資金の準備をはじめたいという人には選択肢のひとつとなります。
生涯にわたって年金が給付されるため、貯蓄が尽きる心配がありません。
(2)トンチン年金のデメリット
年金支給開始前に死亡した場合や途中で解約した場合には、払込金額のおよそ70%しか返戻金がありません。
また、年金累計額が払込累計額を超えるまでには、かなり長生きをしなければなりません。
加入年齢が50歳以降であるため、月額保険料も高額になります。
トンチン年金は、生涯にわたって年金を受け取れますが、保険料の一部が掛け捨てとなる可能性が大きくなります。
あくまでも長生きした場合の保障と割り切れる老後資金に余裕がある人に向いた商品といえます。
受け取り方の工夫で長寿の不安を軽減する
公的年金には66歳以降に繰り下げて受け取ると、その期間に応じて年金額が増えるしくみがあります。
66~70歳までの間で1カ月刻みで受け取りを遅らせることができ、金額は1カ月繰り下げるごとに0.7%増えます。
1年遅らせれば8.4%増、70歳まで5年待てば42%増になります。
65歳から本来の額で受け取る場合と、42%増しで70歳から受け取る場合を比べてみると、受け取った累積の年金額は81歳くらいで両者が同じになります。
それ以上生きれば、70歳で受給開始した方が受け取った累積年金がより多くなります。
老後の当面の資金にメドがついているなら検討に値します。
公的年金は遺族給付のしくみもありますが、基本は生きている間に受け取る設計となっています。
おのずと長生きした方が得になるという「トンチン性」はあります。繰り下げ受給はトンチン性をさらに生かす受け取り方ともいえるでしょう。
長い老後に向けては貯蓄や年金などで対応するのが基本になります。
しかし、年金生活に入れば月1万円の違いは大きく感じます。
公的年金の受け取りを遅らせ、年金額を少しでも増やすためにも、できるだけ長く楽しく働けるようにして賃金で暮らせる期間を延ばすことも検討した方がよいでしょう。
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この記事はエーエフコースの記事より転載しています。