保険金受取人の指定と変更
2017/03/23
保険契約者以外を保険金の受取人とする契約は、他人のためにする生命保険契約です。受取人を誰にするかは税金面で大きく異なるため重要です。また、生命保険は長く掛けていくものなので将来、家族関係が変わることがあります。
受取人はいつでも変更できますが一定の制限があります。受取人の指定と変更について見てみましょう。
保険金の受取人の指定について
保険金の受取人の指定 | 一定の制限はあるが受取人を誰にするかは自由(※1) | 保険金の受取人の指定方法(※2) | 具体的に受取人の氏名を表示する |
受取人の承諾が必要 | |||
法人を受取人にすることも可能 | 抽象的に「被保険者の法定相続人」と表示する | ||
受取人は1人ではなく複数でも可能 |
(※1)保険金の受取人に指定できる人には、次のような制限があります。このような制限を設けることで、保険金が不正に支払われることを防ぎます。
【保険金の受取人に指定できる人】
・配偶者
・一親等(親・子)
・二親等(祖父母・兄弟・姉妹・孫)
【二親等内の血族がいない場合】
三親等内の血族(叔父・叔母・甥・姪)を指定できる生命保険会社もあります。
【内縁関係、婚約者を指定したい場合】
基本的には血縁関係のある者が受取人となりますが、生命保険会社によっては内縁関係や婚約者であっても、一定の基準を満たす者であれば指定できることがあります。
(※2)保険金の受取人を指定しない場合は保険契約者が保険金を受け取ることになりますが、本人が死亡しているため、相続人が保険金を受け取ることになります。
契約期間の長い生命保険は、時間が経つにつれて受取人が変更になってしまうことが多いため、個人名でなくても指定することができます。たとえば、親族関係が変化するたびに受取人も変更しなければならない手間を省くため、「相続人」などと指定することもできます。
保険金の受取人によって税金が変わる
生命保険を加入するときには保険金の受取人を指定します。受取人を誰にするのかによって保険金の税金が変わってきます。契約者、被保険者、受取人によって、受け取る保険金は、相続税・贈与税・所得税(+住民税)のいずれかの課税対象となります。
死亡保険金にかかる税金は以下のようになります。
契約者 | 被保険者 | 保険金受取人 | 税金の種類 | 備考 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税【一時所得(※3)】 | 受取人が契約者の場合 |
夫 | 夫 | 妻または子 | 相続税 | 契約者と被保険者が同じ場合 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 | 契約者、被保険者、受取人がそれぞれ異なる場合 |
(※3)死亡保険金の一時所得は総合課税または源泉分離課税の選択可
税金面では相続税が有利
3つのパターンのうち、税制上有利なのは相続税です。生命保険の非課税分に加え、葬儀費用なども非課税となります。さらに、相続する金額から基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)が差し引かれるため、大きな資産がなければ高額な税金を支払う必要がありません。
また、配偶者を保険金の受取人にすることで、配偶者控除(配偶者の法定相続分または、1億6,000万円までは非課税)を利用することができます(2016年5月現在)。
相続税の計算式
【平成27年1月1日以後に相続が開始(被相続人が死亡)した場合】
課税価格の合計額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
=課税遺産総額
保険金の受取人の変更について
生命保険は長く加入していくものなので、途中で保険金の受取人を変更することも考えられます。基本的に受取人の変更はいつでも可能です。
1.保険金の受取人の変更手続き
保険金の受取人の手続きは基本的にはいつでも何回でも変更を行うことができます。受取人の承諾は必要ありません。被保険者の承諾は必要になりますが、契約者と被保険者が同じ場合は必要ありません。
2.遺言による保険金の受取人の変更
保険金の受取人の変更は遺言でも可能です。ただし、遺言にて受取人を変更する場合、遺言書の方式が法律上適切でない場合には受取人の変更が認められない場合があります。
また、遺言の有効性を確認するなどの手続きが必要になるため、通常の手続きに比べて、保険金の支払いまでに時間がかかる可能性があるので注意が必要です。