市場価格調整(MVA)
2019/11/24
「市場価格調整(MVA:Market Value Adjustment)」とは、解約返戻金等の受け取りの際に、市場金利に応じた運用資産の価格変動が解約返戻金額等に反映される仕組みのことです。
一般的に、中途解約時に、積立金額に所定の「市場価格調整率」を用いて、解約時点の運用資産(債券等)の価値を解約返戻金に反映(控除・加算)します。
現在、「個人年金保険」、「終身保険」、「養老保険」などの一部に市場価格調整(MVA)を利用した生命保険商品があります。
価格変動の具体例
市場価格調整の意味を理解するため、解約返戻金の受取時に市場金利に応じた価格変動が反映される具体例(考え方)を示します。
保険会社が契約者に支払うための保険金(責任準備金)を国債などで運用しているとします。
例えば、利率1.0%の10年国債を購入したとして、5年後に利率2.0%の国債が売り出されたとすると、この時点で残り5年、利率1.0%の国債を手放そうとしても、既に利率2.0%の国債が出回っているので保険会社としては売れずに困ります。(利率が上がるということは債券(国債)の価格は下落していることを意味します。)
利率1.0%の国債を利率2.0%のものと同等の価値にするためには、国債価格の下落分を解約返戻金から差し引いて充当する必要があります。
つまり、契約したときよりも解約時の積立利率が上回っている場合は解約返戻金が減り、反対に契約したときよりも解約時の積立利率が下回っている場合は解約返戻金が増えることになります。
このことから市場金利の変動により解約返戻金が払込保険料の総額を下回ることがあり、損失が生ずる可能性がありますので注意が必要となります。
なお、解約した場合、措置期間に応じて一定の金額を解約返戻金が差し引かれます。差し引かれる金額は保険会社ごとに定められた「解約控除率」によって異なります。
市場価格調整率の算出式
市場価格調整率の計算式は保険会社によっても若干異なりますが、ある保険会社における市場価格調整率の計算式は以下のようになっています。
={1-((1+適用積立利率) ÷ (1+解約日積立利率+0.3%))}×(残存月数)÷12※適用積立利率 :契約中の保険契約に適用されている予定利率
※解約日積立利率:解約日に契約すると適用される予定利率
ややこしい算出式ですが、契約中の保険の予定利率に対して、解約日に契約すると適用される予定利率に0.3%を加算した利率がどの程度増減しているかで解約返戻金を増減するものです。市場価格調整率に上限や下限はありませんが、解約返戻金が0を下回ることはありません。
例えば、残存期間5年の個人年金を解約して、契約時の予定利率が1%、解約時の予定利率が1.2%であった場合、市場価格調整率は2.44%となり、その分だけ解約返戻金から控除されます。
この市場価格調整のほかに解約控除率もあわせて控除されることを考えると解約返戻金の減額幅は少なくありません。このように金利動向によって解約返戻金は大きく減額される可能性があるので、できるだけ解約はしない方向で慎重に契約をする必要があります。