逓増定期保険について
2017/04/17
逓増定期保険とは、逓減定期保険とは逆に、保険金額が段階的に増えていくタイプの定期保険のことです。時間の経過とともに徐々に増えていくものもあれば、一定期間が過ぎた後、所定の割合で増えていくものもあり、逓増タイプは各種商品によりそれぞれです。
逓減定期保険と同様、満期保険金はありませんが、解約返戻金は受け取れます。
解約返戻金の利用
解約返戻金を利用できるこの保険は、一般的に法人にニーズがあります。
経営者は事業の成長とともに多くの準備金が必要になるため、財政面の強化や万一の場合の準備金などに活用しています。退職金の資金に使われることも多く、その場合は退職予定時期に合わせて解約返戻金がピークになるよう設計します。
逓増定期保険のしくみ
上図は、逓増定期保険のしくみを表したものです。逓減定期保険とは対照的に契約時の保障額が毎年一定の割合で逓増していきます。
逓増定期保険は、逓減定期保険とは異なる、20年、30年、40年というようにかなり長い保険期間となっています。保障額の増加割合は、ほとんどが契約当初の保障額の5倍以内とされています。また、保険料は、逓減定期保険と同様、保険期間を通じて定額です。
逓増定期保険のメリット・デメリット
逓増定期保険のメリットは税金対策として有効なことです。また、退職金に充てられるだけでなく、もしもの時の資金調達の代わりにもなります。さらに解約返戻金の7割程度を限度に融資を受けられるというのも利点です。
逓増定期保険の特徴のひとつに、早い段階で解約返戻金が高くなることがあります。これにより早い時期にピークがくるものであれば引退や資金調達の見通しもつけやすくなります。一方で逓増定期保険のデメリットは保険期間中のキャッシュが固定されてしまう点です。
特に決算対策で逓増定期保険を活用する場合は、節税効果を高めるために、それ相応の保険料を設定することになります。逓増定期保険への加入を検討される場合、まず初めに考えなくてはならないのが、将来、保険料の支払いが可能かどうかという点になります。
また、返戻率が高い時に合わせた解約が難しいケースがあることです。逓増定期保険の留意事項は「返戻率のピークは1度しかやってこない」という点です。
どの逓増定期保険でも必ず最大返戻率となる契約年度を設けており、その前後の契約年度も高返戻率となりますが、最大返戻率についてはあくまでも契約期間中1回のみです。この1回を逃してしまうと、その後、返戻率は徐々に下がり、最後には0%となってしまいます。
解約をするならば、返戻率が高い時期にしたいのですが、その解約するタイミングでなにか費用を発生させるなど、対策を練る必要があります。
逓増定期保険の活用例
逓増定期保険は、時間の経過と共に保険金額が増加する仕組みのため、普通の定期保険とは活用方法が大きく異なります。以下は、具体的な活用例です。
・経営者や役員の勇退時に保険を解約すると、解約返戻金が一括で戻ってくるため、それを「退職金(退職慰労金)」の財源とすることができます。
・役員退職金規定の整備により、経営者や役員が万一の時に、一括で受け取る死亡保険金を「死亡退職金」や「弔慰金」にすることができるため、残された遺族に対して、生活資金や相続・事業承継資金を遺すことができます。
・払い込む保険料は、税法上の要件のもと、一定割合が損金扱いとなるため、保険料の実質負担を抑えることができます。
・契約者貸付制度を利用することができるため、解約返戻金の一定の範囲内で、企業の運転資金として活用することができます。
・保険会社により取扱いは異なりますが、保険期間の途中で、貯まっている解約返戻金をもとに、終身保険等への変更もでき、一生涯の保障に切り替えることができます。
このように逓増定期保険は、企業において、退職金の準備や経営のリスクマネジメントなどに活用できます。