標準利率改定による影響
2017/02/21
標準利率とは
生命保険会社は、将来の保険金の支払いに備えて責任準備金を積み立てています。この責任準備金は、不足すると保険金の支払いに影響してしまうので、金融庁が一定の基準を設けて監督しています。(標準責任準備金制度といいます)
監督する上で標準責任準備金の計算に用いられる数値の一つに標準利率があります。この標準利率は、責任準備金を運用する利率と解釈できます。つまり、この利率が高いと将来の運用益を多く見込めるので、その分、積立額は少なくてもよいということになります。
反対にこの利率が低いと、あまり運用益が見込めないので、将来の保険金の支払い額を確保するためには、その分多くの積み立てが必要ということになります。
標準利率の設定方法
1.基準利率の計算
毎年10月1日に、10年国債の応募者利回りの過去3年平均値と過去10年平均値のうち、低いほうのものを下表に従って区分し、安全率係数を乗じて得られた数値を合計して算出します。
対象利率 | 安全率係数 |
0%~1%部分 | 0.9 |
1%~2%部分 | 0.75 |
2%~6%部分 | 0.5 |
6%超部分 | 0.25 |
2.標準利率の設定
上記で求めた基準利率を基準日時点の標準利率と比較して、0.5%以上乖離している場合、基準利率に最も近い0.25%の整数倍の利率を新しい標準利率として、基準日の翌年の4月1日以降の新契約に適用します。
3.2017年4月の標準利率について
2016年10月1日現在の標準利率 | 1% |
過去3年の10年国債応募者利回りの平均 | 0.361% |
過去10年の10年国債応募者利回りの平均 | 0.983% |
上記の表により対象利率は0.361%となり、対象利率に安全率係数をかけた基準利率は0.325%となります。また、基準利率が基準日時点の標準利率から0.5%以上乖離しているので、2017年4月からの標準利率は改定されます。
改定後の標準利率は、基準金利0.325%から最も近い0.25%の整数倍の利率となるので標準利率は0.25%に改定されます。
標準利率引き下げに伴う保険料の値上げ
標準利率は、10年国債の応募者利回りを基準に決められます。実情の利回りより高い標準利率にしておくと、将来、生命保険会社の保険金の支払い額が足りなくなってしまい、財務状態が悪化する恐れがあります。
このため、国債の利回りが低下すると標準利率が下がります。こうなりますと生命保険会社は責任準備金を多く積み立てなければなりませんし、その責任準備金の元となる保険料を上げなければならないということにつながってくるのです。
※責任準備金を積み増して、保険料はそのままにしてもよいのですが、そうすると生命保険会社の財務状態が悪くなる方向に進んでしまいます。
生命保険会社が保険料を値上げする場合は、理論上、養老保険や終身保険など貯蓄性の高い保険ほど値上げ幅が大きく、短期間の定期保険など貯蓄性の低い保険は値上げ幅が小さいということになります。
反対に標準利率が上がる場合は、先程の説明の逆の動きになり、理論上、養老保険や終身保険など貯蓄性の高い保険ほど値下げ幅が大きく、短期間の定期保険など貯蓄性の低い保険は値下げ幅が小さいということになります。
なお、値上げ(値下げ)といっても保険料の改定後の契約についての話で、これまでに契約した保険の保険料が上がるということではありません。