生命保険会社は破綻前でも既契約の予定利率を引き下げることができますか?
生命保険会社は、保険料算出の際に予定利率で割引いた分に相当する金額(予定利息といいます)を運用収益などで毎年確保する必要がありますが、超低金利が続く中で、この予定利息分を実際の運用収益でまかなえない「逆ザヤ」状態が一部の契約で発生しています。
さらに株価低迷が長期化するなど、生命保険会社を巡る経営環境は大変厳しくなっています。
こうした状況を考慮して事業の継続が困難になる前に保険契約者の利益を守るための新たな選択肢を用意することが保険契約者の保護になると判断されれば、予定利率の引下げなどの契約条件の変更ができます。
予定利率引き下げの流れ(概要)
保険業法の破綻の要件である保険業の継続が困難な状態には至っていないが、将来を見通して、契約条件の変更を行わなければ、他の経営改善努力を織込んでも保険業の継続が困難となることが合理的に予測できる場合に保険会社の自主的な申請により行われます。
保険契約者の保護のため、やむを得ない場合に行われるものでなければならず、その申請の内容について、政府による審査・承認を得なければなりません。全保険会社が一斉に契約条件変更の手続を実施するものではなく、また会社の意思に反して強制的に契約条件変更の手続が実施されることもありません。
相互会社の場合は総代会、株式会社の場合は株主総会で会社としての意思決定を行います。
その後、契約者の意思を反映させるために、契約条件変更の対象となる契約者に対し、契約条件変更の内容を通知し、その10分の1を超える反対があった場合には、契約条件を変更できないという異議申立手続きがあります。
この契約条件の変更内容の通知には、契約条件の変更がやむを得ない理由のほか、変更後の業務および財産の状況の予測、基金・劣後ローンの取扱い、経営責任の考え方などについても明示されることが必要です。
なお、契約条件変更手続においては、法令上、予定利率以外にも予定死亡率、予定事業費率等の契約条件の変更ができるようになっています。