予定利率の変動に伴う保険料への影響
2017/04/29
予定利率とは生命保険会社は、契約者からお預かりした保険料を有価証券等で運用し、利益を確保しながら将来の支払保険金に備えています。その運用によって得られる利益を予想して、予め一定の利率で保険料から割り引いて保険料を算出しています。その利率を予定利率といいます。
2013年4月に金融庁が12年ぶりに標準利率を引き下げました。これに伴い、生命保険会社の各社は予定利率を変更、保険料が改定しました。保険料への影響はどんなものだったのでしょうか。
営業保険料の構成と基礎率
生命保険の営業保険料の構成
純保険料【予定死亡率、予定利率で算定】) | 危険保険料 | 死亡保険金の財源 |
貯蓄保険料 | 満期保険金の財源 | |
付加保険料【予定事業率で算定】 | 予定新契約費 | 契約の締結に関する経費 |
予定維持費 | 契約の管理・維持に関する経費 | |
予定集金費 | 保険料の集金に関する経費 |
保険料を決定するには、あらかじめ「予定死亡率」、「予定利率」、「予定事業費率」(これらを「基礎率」といいます)を決めておくことが必要です。純保険料は予定死亡率と予定利率で算定され、付加保険料は予定事業費率により算定されます。
予定利率は、保険業法の規定に基づいてその目安となる基準(標準利率という)が設けられています。そこで、この標準利率が変更されると、生命保険会社各社の予定利率も変更されるということになります。
予定事業費率については、保険金比例(保険金の1%、2%というような決め方)、保険料比例(保険料の1%、2%というような決め方)、定額制(保険金や保険料に関係なく、一定額にする決め方)などの方式があります。
予定事業費率や予定死亡率が上がると生命保険会社の支払費用の増加が見込まれるため、保険料は高くなります。反対に予定利率が高くなると生命保険会社の運用益の増加が見込まれるため、保険料は安くなります。貯蓄型の保険であれば、将来戻ってくるお金が多くなる、お得な保険と言えます。
定期保険などの保障性商品のアップ率は小さい
2017年4月、生命保険会社の各社は、標準利率が同年4月1日から0.25%(改定前は1.0%)に引き下げられたことに伴い、主な保険種類に適用されている予定利率を引き下げる改訂を行いました。参考までに日本生命は1.35%から0.85%に引き下げています。
この結果、生命保険会社の運用益が減少するため、ほとんどの保険商品について保険料は引き上げとなりました。
定期保険など保障性の高い商品や保険期間の短い商品ほど保険料のアップ率は小さくなって影響は少ないのですが、養老保険など貯蓄性の高い商品や保険期間の長い商品ほど運用益の減少の影響を受けて保険料のアップ率は大きくなっています。
※同じ種類の契約内容でも、各社の保険料に違いが出ています。
(参考)主要保険種類の予定利率
契約日 | 予定利率 |
1996年4月2日以降 | 2.90% |
1999年4月2日以降 | 2.15% |
2001年4月2日以降 | 1.65% |
2013年4月2日以降 | 1.15% |
2017年4月2日以降 | ? |
予定利率の推移に注目
月払いの主力商品の保険料を値上げする、若者などが保険離れする可能性があります。生命保険会社の各社は事業コストを抑えて、なるべく値上げしないように検討していますが、1社のみが保険料を値上げすれば顧客を奪われる可能性も出てきます。
商品の大枠を固めていく年末に他社の動向を見ながらどのような動きを見せるか、今後の予定利率などの推移が気になるところです。